旧日本軍に密かに設立された秘密戦士養成機関「陸軍中野学校」。
そこには、極秘で選抜された日本トップクラスのエリートたちが集められた。
陸軍の学校にも関わらず、服装は軍服に丸坊主ではなく、平服に長髪。“天皇は絶対”、“玉砕覚悟”が当たり前だった当時、“天皇への信仰よりも任務を優先”、“なんとしても生き延びろ”と異質な教育が叩き込まれていた...
授業内容は、毒薬、偽札製造、外国語、法医学、心理学、気象学など多岐にわたり...甲賀流忍術14世名人を呼んで忍者の極意を学んだり、服役中のスリの名人を刑務所から招いての出張講義なども行われたという。
「陸軍」という言葉からは想像もつかない指導・科目ばかりが並ぶが…もちろん、これらの教育には全て重要な意味があった。
全ては、“日本を守り抜き、アジアを解放するため”。
そして、卒業生たちは海を越え、インド、ミャンマー、インドネシアなどアジア諸国を独立に導くなど、歴史的な偉業を数々成し遂げ…英国支配の時代を終わらせた。
しかし実は、中野の教育課程はわずか1年前後…一体なぜ中野卒業生たちは、それほど短い期間の教育で、これほどの偉業を為すことができたのか?
もちろん、学校で叩き込まれた様々な技術も役に立ったことには間違いないが…中野出身者たちが次々とアジアからの信頼を得て独立を指揮し、歴史に名を残さずして偉業を成し遂げた最大の理由は別にあった。
戦後、インド独立に大きく貢献したある日本人にイギリス情報局が行った取り調べでは、こんなやりとりがあったという。
「現地の言葉も話せず、秘密工作経験も海外勤務経験もほとんどない君がどのようにしてこのような大成功を収めたのか。君にインド国民軍を創設し、インド独立運動のリーダーを最前線で支援する力があるとはとても思えない...」
男は少し笑みを浮かべてこう答えた。
「あなた方の植民地経営は上手くいっているように見えて現地住民たちを無視したものだった。そこには人間愛・思いやりがない。だから圧迫と摂取から彼らの夢であった民族の自由と独立への悲願達成を僕が手伝ったのみだ。そこに民族や言葉、敵味方の壁は存在しない」と。
それこそが、欧米諸国や中国解放軍、ソ連などが抱える一流の諜報組織ともまた一線を画す、日本人特有のインテリジェンス…陸軍中野学校が何よりも重んじた「誠の心」であった。
しかし、それほどの偉業を成し遂げた男たち、そして彼らを育てた陸軍中野学校が、ほとんど知られていないのには理由がある。
「中野は語らず」
彼らはこの不文律を生涯守り抜き、秘密戦士としての守秘義務で、戦時中はもちろん、敗戦後、卒業生はその学校について口を閉ざしたのだ...
そもそも、その学校の存在さえも当時、ごく一部の限られた軍幹部しか知らなかったという...
また、ほとんどの関連資料は、国家トップシークレットであり、人目に触れる前に、戦後すぐに、徹底して焼却された。
そうして、日本最高峰のインテリジェンス、秘密戦士たちの伝説は今日まで、封印されてきた...
しかし、その眠ったままの陸軍中野学校にこそ、日本人にしかない大切なインテリジェンスがある。
今こそ、それを学び、受け継いでゆく時が来た...